人事DDで「本当のキーマン」が見えなくなる構造
「名簿に載るキーマン」と「現場を動かすキーマン」は、必ずしも一致しない
人事デューデリジェンス(DD)では多くの場合、「リスクは把握できた」という手応えを抱きます。
組織体制や人員構成、評価制度に退職率、主要メンバーの経歴、資料は揃い、質問への回答も整合性が取れている――。
「人のリスクは大きくなさそうだ」 という整理がなされるのは、ごく自然な流れです。
それでもクロージング後に起きることは、「想定していたキーマンと実態が違った」「あの人が辞めるとは思わなかった」という声です。
これは調査が甘かったわけでも、人事DDの失敗でもありません。
構造上、「見えないもの」を扱っているがゆえに起きる必然なのです。
資料には現れない「影の影響力」
人事DDで把握されるキーマンの多くは、以下の条件に該当する人々です。
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役職上の責任者
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契約上の当事者
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制度上の評価対象
しかし、実際に現場の心を動かしているのは、必ずしもこうした「表面上の責任者」とは限りません。
現場には、名簿や資料には現れない影響力が存在します。
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「あの人がどう受け止めるか」で、周囲の態度が決まる
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「あの人が沈黙する」だけで、空気が一変する
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「あの人が離脱する」と、組織が一気に崩壊する
こうした「影のキーマン」ほど、平時は物静かに振る舞っています。
彼らがその真の影響力を発揮するのは、統合や方針変更といった「事態が動く瞬間」です。
ディール前の静かな状況では、その力学に気づくことは困難です。
キーマンは「最後まで耐えようとする人」である
もう一つ、見えにくさを強める要因があります。
真のキーマンは、不満をすぐに口にする「去りそうな人」ではなく、「最後まで組織を支えようと耐える人」であることが多い、という点です。
彼らはギリギリまで踏ん張り、限界を超えたときに突然組織を離れます。
その決断の瞬間を、事前の資料調査で予測することは不可能です。
「想定外」は、構造が生み出した結果
人事DDの本来の目的は、リスクを洗い出すことです。
しかし、本当に厄介なのは、リスクとして認識されないまま、事後的に致命的な影響を及ぼす「人の存在」です。
人事DDは、与えられた条件の中で最善を尽くしています。
ただ、「人が人をどう動かしているか」という生身の力学は、資料や限られたヒアリングだけで完全に捉えきれるものではありません。
ディール後に繰り返される「想定外」という言葉。
それは単なる偶然ではなく、事前に構造的に見えなくなっていた結果なのです。

